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(和訳:これまでのブサイククエスト)
・・・
後輩の紹介で成蹊女子に通う女子高生、京子、マキと出会ったばかなべとヒロ。
ばかなべは京子と付き合うことになったが、京子の独占欲の強さにとまどっていた。一方、自分との温度差に怒りを覚えた京子は、ばかなべのバイト先に現れ人目もはばからず泣き怒りという高度な技術でばかなべを攻め立てた。
ビビりのばかなべは「逃げる」コマンドを連発するが、京子の追及はとどまることを知らない。実家の電話が鳴り響く。←実家に電話をかけてくる時代。
これはいよいよまずい、なかったことにしたい。ばかなべはリセットボタンを押す覚悟をもって「実はマキのことが好きだから」と最低のウソを電話で告げた。
その電話口にマキがいることも知らずに・・・
この物語は、ばかなべの人生にとってもっとも女と揉め、
もっとも女に心を燃やしたとてつもなく痛いストーリーである。
前回の記事はコチラから
「ばかなべさん」
最寄り駅の改札を出たとき、誰かが僕を呼んだ。その先にいたのはマキだった。世紀の京子リセットボタン事件以来、目の前にはマキがいた。
「あ・・あれ、どうしたん?」
「この前はごめんな。バイト先まで行って・・」
「いや・・、あれは京子ちゃんに頼まれたんやろ?」
「うん、そうやけど。」
「マキちゃんが悪いわけちゃうし、全然気にせんといて。こっちこそごめん・・。」
「うん、でな迷ったんやけど、昨日京子と話してきてんけど・・」
「うん」
「私もばかなべさんのこと気になっててん。」
「え!?」
「だから、ヒロさん付き合おうって言ってくれたけど断ってん。知ってるんやろ?」
「あ・・あぁ・・」
「私どうしたらいい?」
「え・・けど、京子ちゃん怒ってなかった?」
「うん、めっちゃ怒ってた。説得はしたけど縁切られたかもしれん。」
「え!?それ大丈夫なん??」
「大丈夫じゃないけど、私も後悔したくなかったから。」
マキは友達との関係を捨てる覚悟でばかなべの前に現れた。
-もう後には引けない
さすがのばかなべもあのウソはまずい、そう思っていた。ばかなべはマキに本当のことを話した。京子にビビッて嘘をついてしまったこと、とはいえ、もともとはマキを気に入っていたことを。
平謝りのばかなべをマキは笑顔で許した。なんて広い心だろうか。これは東京ドーム3個分の広さだなんてふざける場面ではないが、少なくともドームレベルに広いと思ったのは確かだ。そしてこの日からばかなべとマキは付き合うことになった。
・・・
付き合ってみるとマキとの相性の良さに驚いた。とにかく話が合うし、笑いのツボが同じ。ほぼ毎日会っていたし、同じテレビを見ていたからツボがあってくるのは当然といえば当然だが、ばかなべをここまで笑わせることができた女は今なおマキのみといってまず問題がないレベルだ。
また、底抜けに明るい性格で、よく笑う。いつも明るいからこっちまで楽しい気分になる。とにかく笑顔がかわいい。そして、もうひとつ驚いたのは僕とマキの誕生日が1日違いだったことだ。マキの誕生日が終わると同時に僕の誕生日がはじまる。若い二人にとってそれは運命的なものに思えた。
僕は京子と別れるために「マキが好きだ」と嘘をついたが、その嘘が本当に変わるのに
時間はさほどかからなかった。
「モテるやろ?」
マキに聞いてみると意外にも僕が2人目の彼氏だと言った。マキはスリム体型だがおっぱいはCカップ。おしゃれですらっと和風美人タイプ。だから意外だった。元彼とは高校1年の頃に付き合っていたけど、すぐに別れてしまいキスすらしていないらしい。ということは処女・・・
ばかなべは当時、数人経験はあったものの先輩の彼女やエロヤンキー女などが相手であり、処女とは対峙したことがなかった。このとき「この子が俺の処女作か・・・」とくだらないことを考えていた。
・・・
-12月24日
付き合ってから約1ヶ月半がたったころ、クリスマスがやってきた。僕たちは神戸ハーバーランドへ向かい、映画を見たり食事をしたりして過ごした。

モザイクから見えるポートタワーが水辺に映り、とても美しかった。
ここしかない。
マキはクリスマスの海の景色に感動している様子だ。一方のばかなべはマキとちゅーしたくて仕方なかった。ばかなべも一応は人の子。京子との1件を反省し、ガチで気に入ってからちゃんとちゅーしようと決めていた。
そして、当時のばかなべはガッチガチでマキに惚れていた。惚れていたがゆえにビビッてちゅー出来なかったのだ。しかし、とうとうチャンスは巡ってきた。さぁ神戸よ、海よ、クリスマスよ、我に力を与えたまえ!!
ここでばかなべは伝家の宝刀、マフラーを引き抜いた。
「はい、これクリスマスプレゼント!」
「え?マフラー?」
「うん、なんで?」
「だって・・」
そういうと、マキは手編みのマフラーをばかなべに差し出した。
「お互いマフラーてベタやな(笑)」
「どんだけベタやねん(笑)わらけるわ(笑)」
「何これ、手編み?」
「うん。愛情感じるやろ?」
「ちょっとへたくそなんちゃう?(笑)」
「うるさいなー。はじめてやねんから仕方ないやろ(笑)」
「いやいやこれはセンスの問題ですよ(笑)」
「もうしらん!」
「怒ってんの?(笑)」
「文句言うんやったらあげへんで!」
「マキ、俺、お前がめっちゃ好きや」
なんだこのしょっぱいやりとりは。。。
ていうかリメイクで記事を書き直しているがこんなこと書いていたのかと思うと自分にドン引きである。オリジナル記事ではこのときばかなべがマキを抱きしめるとマキは泣き出したとある。しらんがな。
「な・・なんで泣いてるん?」
「う・・うぅ・・」
「ど・・どないしたん?ホンマに怒ったん?」
「ううん・・。ちゃうねん。うれしいねん。」
「え?マフラーが?」
「ううん・・・、だって初めて言ってくれたやん」
面と向かってマキに好きだと言ったのはこのときが初めてだった。京子に嘘をついたあのとき以来、ばかなべは何もマキに伝えていなかった。決して泣き虫なタイプではないマキがばかなべの腕の中で泣いている。
「好き」という言葉にそこまで喜ぶマキを僕はとても愛しく思えた。←しらんがな
・・・
-数ヵ月後
お互いの誕生日がやってきた。
「友達の家に泊まる」
親に嘘をつき、ばかなべとマキは一緒に過ごすことにした。
「クリスマスもここ来たな」
「てかしょっちゅう来てる(笑)どんだけ私らここ好きなん(笑)」
「ほんまやな(笑)来年もここに来ようか」
「うん」
クリスマス以来、お気に入りとなった神戸ハーバーランド。それは二人の思い出の場所になった。そしてその夜、ばかなべはマキと初めて結ばれた。初体験となるマキは僕にしがみつきながら痛さを我慢していた。
・・・
マキとの関係は順調だった。
だが、人生においてはもっとも迷走していた時期だった。父親には必ず進学するようにと幼い頃から言われていたが、当時のばかなべには進学することに大きな意義を感じることが出来なかった。そのため、勉強も本気になれず、サボった時間は志望大不合格という結果をもたらした。
何をしたいのかもわからない、だから何もしない。何の目標も持たず、ただ自堕落な時間を過ごしていた時期。
「シンガポールにいけ」
( ゚д゚ )
父親は僕にシンガポールへ留学するように言った。
父親が世話になっている方がシンガポールに住んでおり、そこにホームステイして語学や文化など学んでこいということだ。
「これからは広い視野で世界を見るべきだ」
それが父親の考え。ごもっともだ。
しかし、海外に行くような勇気はなかった。
単純に外国人にビビッていたのだ。
「1年間、時間をください。」
完璧な「逃げる」コマンドだ。
父親曰く、僕の初めての反発だったらしい。実際は反発ではなく「逃げる」コマンドだが・・・
1年の間に必ず自分の方向性を決める、だから1年間だけ時間がほしい。無論、根拠などない。ばかなべが望んでいたのはマキと毎日セックスを楽しむ日々の現状維持。まったく浅はかである。
「わかった。お前の思うとおりにすればいい。」
まさかの受け容れ。今思えば父親の愛情はあまりにもデカい。東京ドーム●個分・・・もうこのくだりはいらない。
・・・
それからのばかなべは、将来の自分に漠然とした不安を抱える一方、どんどんマキにのめりこんでいった。
マキはとにかく魅力的な女だった。初体験のときは多少痛がっていたがすぐに快感を得られるようになったようだ。そして色気がすごかった。目をうつろにしながら感じる姿は高校生とは思えないほどに色気があった。スリムで美しい体型だが胸とおしりはそこそこに肉付きがあり、腰の振り方にいたっては正常位、騎乗位ともにグイングインとグラインド。
まさに文句のつけようがないデキである。
・・・
-8月
夏休み期間を利用して、マキと初めて約1週間という京都へ行った。貧乏旅行だったが、二人で遠出したのは初めてで目に映るものすべてが新鮮だった。
旅行最後の日、天橋立を覗き込んでいたら
「いつか結婚できたらええな」
マキは僕に言った。
「うん、そうやな」
迷わずばかなべも応えた。マキとなら一生一緒にいられる、当時のばかなべはそう思えたのだろう。
そして、何を血迷ったのかマキの両親へ挨拶に行こうと二人は考えはじめる。
ばかなべ家は自宅開放型である。よって歴代彼女も普通に家に連れてきていた。ばかなべも彼女たちもただやりたいだけだったのは言うまでもないが、一方で彼女たちの家にはほとんど行ったことがなかった。
彼女たちの親に挨拶なんてしたことがないわけだが、当時のばかなべはマキに心酔し、将来を真剣に考えたつもりだったのだろう。
マキに聞けばお父さんはとっても怖い方で、厳しくて不愛想と聞いていた。マキは一人娘で大事に育てられていたらしい。相当にアウェーであろうがいつかは乗り越えなければならない壁。
いざ。
マキの自宅に行くと厳しそうなお父さんとやさしそうなお母さんが出迎えてくれた。どうやらマキは父親似のようだ。
お前は何者だ感がハンパないお父さん、人生で最も緊張した瞬間だった。
「正式にお付き合いさせてください」
ばかなべは勇気を出して言った。そして、マキのお父さんから出てきた言葉は
「大事にしてくれよ」
「はい、もちろんです」
このころ、ばかなべは本気の恋をしていたのだ。
・・・
-9月
相変わらず続けていた遊園地のバイト先には、尊敬する吉村さんという先輩がいた。吉村さんはおしゃれで格好良く、スマートで人格も素晴らしい人だ。関西で有名な某国立大学の3年生。
吉村さんは、ばかなべに色んなことを教えてくれた。物事の考え方から、ギブアンドテイクの精神等を歴史などに基づいて教えたり指導してくれたりした。
ばかなべにとって吉村さんは憧れでもあり、良き相談相手だった。そんな吉村さんにマキの両親に挨拶にいったことを話すと
「ばかなべ頑張ったな(笑)じゃ、彼女のためにもしっかりせんとな。」
「はい、けどシンガポールか、大学受験しなおすかで迷ってます。」
「そうか、俺はどっちでもいいと思うで。」
「え?そうですか?」
「そう、どっちを選択しても、自分で責任を持って選択したならそれが正解や」
「はい。」
「ただなお前には重大な課題がある」
「僕の課題ですか・・」
「そう、わかるか?」
「いや、わかりません・・」
「お前は何かに本気になったことあるか?」
「本気・・」
「そう、お前は賢いし器用やと思うよ。能力はあるんちゃうかな。けど、お前が本気になったって見たこともなければ聞いたこともない。」
-その通りだ
「今まで適当な努力でもやれてたやろうけど、これからはそうはいかへん。情熱があるやつには勝てへんで。」
「情熱ですか・・」
「そうや。情熱があるやつは目標に向かって努力できるからな。」
「はい・・」
「ばかなべは今までガムシャラになって這いつくばって努力した経験あるか?」
「いえ、ないと思います。」
「そうやろな。だからばかなべは努力して何かを掴む素晴らしさを知らんと思う。」
「確かにそうだと思います。」
「努力せずに掴んだものはあんまり意味はないと俺は思う。で、努力して掴めなくてもそれはそれでいいと思う。」
「どういうことですか?」
「努力すれば、結果は出なくても成長はすんねん。」
「はい。」
「だからな、努力しても叶わへんことっていっぱいあるけど、無駄な努力はないねん。一番大切なのは本気で何かに取り組むこと、成長することやから。」
「・・・。」
「お前もええかげん本気になれや。」
-痛いところを突かれた
吉村さんの言うとおり、本気になって何かに取り組んだこと、必死になったことがなかった。
習っていた武道も、試合では結果は出たがそれは人がやらない作戦をとっただけで二度目以降は通用しない。本当の実力ではない。よって、道場からの評価は低かった。
楽して勝てばいい、勝負さえ勝てれば練習なんかしなくていい。そう思っていた。
勉強だって最低限こなしていればいいだろ、その程度だからきちんとした知識も実力も得られることはなかった。
生産性という観点からは楽していかに高い成果をという意味では間違ってはいないかもしれない。
ただし、それは基礎的な知識、考え方があって選択肢を豊富にもったうえでのことだ。
当時のばかなべは単に楽していただけで、圧倒的に何もない状態だった。
「お前もいい加減本気だせや。」
この吉村さんの言葉はばかなべの人生を変えた。マキを幸せにするには、それに相応しい自分にならなければならないのだ。
ばかなべは吉村さんに聞いた
「吉村さん、ありがとうございます。大切なことに気付きました。けど、教えてほしいんですけど、吉村さんはなんでそんな立派なんですか?」
バカな質問だ。しかし、吉村さんはそんな質問に丁寧に答えてくれた。
「俺が立派?そうでもないで(笑)俺だってばかなべから学ぶこといっぱいあるで。」
「本当ですか?」
「お前のリーダーシップとか、引っ張る力や、ここぞというときの力の発揮の仕方はすごいと思うよ。」
「そうですか・・・。けど、僕は吉村さんみたいな思考が出来るようになりたいんです。なんで吉村さんはそんな深いんでしょうか。」
「そうやな、俺は歴史を学びだしてから今の考え方になったかな。今の世界があるのは今までの歴史があったからで、歴史を勉強するといろんなことに気付かされるよ。」
「歴史か・・・」
これをきっかけに、ばかなべは勉強とは何かに少し気づく。
単純に勉強したいという気持ちに駆られ、大学入試のやりなおしを決意した。
・・・
ばかなべは父親に土下座して、今の学校をやめ、もう一度チャレンジしたいことを伝えた。
「そうか、お前の好きにしたらええ」
わがままを父親は認めてくれた。
ただし、条件があった。
失敗したらシンガポールへ留学することだ。
ばかなべはその条件を受け入れ、本気で勉強に取り組んだ。
マキと会うのも1週間に1度に減らした。
マキも受験時期であり、お互い頑張るべきことをやろうと話し合っての結果だ。
そして、今まで一度も本気で勉強したことがないばかなべは、本当の勉強の辛さをここで初めて知る。
昨日覚えたはずの知識が思い出せない・・・
覚えても覚えてもどんどん忘れてゆく・・・
その積み重ねの結果が知識となる。
みんなこんな辛い思いをしていたのか。
そんな当たり前のことを今更気付いた。
自分はみんなから遅れをとっていることを痛感したのだった。
-でも、諦めたくない
ばかなべにとっては絶対に負けられない勝負だった。
恐らくそれまででもっとも努力した日々を過ごしたころである。
・・・
-2月
既にマキは受験を終えていたが、ばかなべはこれからが本番という時期。
マキはずっとばかなべを応援し続けてくれた。そして、第一志望の大学受験。試験は自分の不得意科目もあったが、自己採点では上出来だった。
そのことをマキに伝えると、マキは自分のことのように喜んでくれた。
-数日後
第一志望の大学から試験結果が出た。
マキと一緒にその通知を見た。
「不合格」
これが現実であり実力だ。
まるですべてを否定されたかのような気持ちだ。
悔しくて、泣きそうになったがばかなべがが泣く前にマキが泣いていた。
「がんばったのに・・・ひっくひっく・・」
自分のために誰かが泣いたのは家族以外にいなかった。
不合格だったのは残念だけど、それよりも自分のために泣いてくれたマキの気持ちがうれしかった。
・・・
-さらに数日後
第二志望の大学から結果通知が来た。
「合格」
第一志望ではないけど、志望大学ではある。
「すごい!たった半年でよくがんばったやん!」
ばかなべの横には自分のことのように泣きながら喜んでるマキがいた。
父親との約束はなんとか果たせた。この大学でなければシンガポール行きは決定だった。
このころ、幸せの絶頂だったばかなべは初めて指輪を買った。バイトで細々と貯めたお金で買った指輪は決して高価なものではない。だが、マキはとても喜んでくれた。
そして、もうひとつのケジメをつけなければならない。
京子のことだ。
マキとばかなべが付き合いだしてから、マキと京子は疎遠になっていた。中学のころから仲が良かった友達なのに、ばかなべのウソが原因で二人は疎遠になっていたのだ。
そんな折、新しい彼氏ができた京子からマキに連絡があった。
いつか謝りたいとマキに言っていたが、京子もばかなべと一度話がしたいとマキに言っていた。
約1年ぶりの再会。
久しぶりに見る京子は少しきれいになっていた。
ばかなべと京子はお互い思っていたことを正直に話した。
そしてばかなべは京子に謝罪した。
「絶対ゆるさへん(笑)」
京子はばかなべとマキを許してくれた。
なんて心が広いのだろうか。東京ド・・・
・・・
-4月
ばかなべとマキはそれぞれ新しい環境にいた。
この頃から、ばかなべはある夢を抱き、その夢に近づくためのアルバイトを始めた。
大学の授業、サークル、アルバイトに忙しいけど充実していた。
特に勉強とアルバイトにはどんどん精を出すようになった。
働いて得る知識、勉強して得る知識、それらが身に染み渡るようで日々成長を感じていた。
マキも春からアルバイトを始めた。コンビニのアルバイトだ。
バイトは楽しいかと聞いたら「店長がいい人やし楽しいで」とマキは笑いながら言った。
バイト先には何度か車で送り迎えをし、店長さんにも挨拶をしたことがあった。
店長さんは「どんくさいけどがんばってるわ」と言ってくれた。
他人にマキを褒められたのがなんだかうれしかった。
-9月
うれしいことが起きた。
8月・9月は学校が休みのため社員並みのシフトでアルバイトを頑張ったら、営業成績が2ヶ月連続で3位に入った。
10ほど支店がある中、社員を含めて約80人の中で営業成績3位入賞(アルバイトでは1位)
飲食店等とは違い特別な知識と営業力が必要な仕事だったが、春から勉強し続けて、貪欲にチャレンジしての結果だった。
もちろん働いていたお店の環境や周囲の支援、ラッキーな面もあった。
それでも結果を出せたことはうれしかった。
この頃からばかなべは努力して結果を出すことに楽しみを覚え始め、本当の意味で自信をつけるようになった。
・・・
-10月
マキと会う約束をしていたが、急にキャンセルになった。
今までそんなことはなかったのに、突然に。
そして、この頃からマキに変化が出始める。
服装が少しずつ派手になってきたのだ。
そして、バイト先の人とよく遊ぶようになった。
・・・
-11月
マキと会うペースは1週間に1度程度になっていた。
マキはどんどん色気を増しているような気がした。
以前よりも激しさを増し、セックスも濃厚なものになっていった。
あるとき、コンドームがなくなったので
「あ、新しいの買わなあかんわ」
と言ったら
「もういらんのちゃう?」
とマキが呟いた。
「え?なんで?」
と聞いたら
「いや、別に・・・」
とマキは言葉を濁した。
子供でもほしくなったのか?と思った。
でも、それは間違いだった。
・・・
-12月
クリスマスが近づいてきた。
前からクリスマスはハーバーランドに行く約束をしていた。
そして、ある日
「クリスマス何時集合にする?」
と聞いたら
「バイト足りひんくて、バイトに入るから無理になったわ」
と言われた。
このとき、いやな予感がした。
クリスマスのことはかなり前から話していたからだ。
もしかして、誰か好きな男が出来たのか?
ばかなべははじめてマキを失うことを怖く思った。
-失ったらどうすればいいんだ・・
不安でいてもたってもいられなかった。
しかし、核心をつく勇気はなく、キスしてごまかそうとしたら
「風邪がうつるから」
なんてベタなキスの断り方だろうか。
しかし、そのときのばかなべに「ベタやな」とつっこむ余裕はなかった。
その後、沈黙が続いたが
しばらくして、
「ごめん、好きな人ができたから別れてほしい」
唐突だった。
もっとも聞きたくない台詞だった。
そして
マキは指輪を外してばかなべに渡した。
「これ返すな」
「ちょ・・ちょっと待ってくれ!考え直してくれへんか?なんか悪いところあんねんやったら直すから・・」
自然と言葉がついて出た。
「ううん、もう決めたから」
「ちょっとまってくれ・・」
「ごめん。バイトやから行くわ。」
その一言を告げ、マキは僕の家を出て行った。
-なぜ
マキがいなくなることを信じられなかった。
ばかなべは部屋で、うなだれた。
-なんとかしなければ
気付けばばかなべは車を走らせていた。
マキのバイト先に向かって。
車を走らせながら、今までのことが次々と思い浮かんだ。
マキはいつも笑顔だった。
くだらない話題でいつも笑いころげていた。
いつも一緒だった。
でも、そのマキは今誰かのことが好きなのだ。
信じられない・・・
次の交差点を曲がると、
マキのバイト先というところまできたとき
ばかなべはあることに気付いた。
-俺は何をしようとしているんだ?
自分がしようとしている行動が、京子と同じことに気付き、ばかなべは我に戻った。
「くそっ」
車のハンドルを殴り、ばかなべは車を停めた。
情けない。
今何をしようとしていたんだろうか。
バイト先にいってどうなるっていうんだ。
自分がされて嫌なことをなぜマキにしようとしていたのか。
自己嫌悪に陥った。
信頼しきっていたマキが去ったことがただただ辛かった。
受け入れ難かった。
しかし、マキが去ったのは事実。
受け入れなくてはいけない。
未経験の喪失感がばかなべを襲った。
しばらく呆然とした。
窓の外を見るとカップルが仲良さそうに歩いていた。
女性の笑顔がマキと重なる。
失ってから気付くマキの存在の大きさ。
できればもう一度、マキとハーバーランドへ行きたかった。
空を見ると妙に晴れ渡る夜空だった。
-帰ろう
ばかなべはUターンして家に帰った。
いつも目の前にあったマキの笑顔は、ばかなべの部屋にはもうなかった。
to be continued…
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