まだコロナが厄介な状況が続いている。
感染したらとたんに悪者扱いとなり仕事もなくなってしまいかねない。自分で完結できるなら良いが仕事に影響を出すわけにはいかない、つまり感染するわけにはいかない。感染すれば間違いなく仕事に影響する。
だから、なかなか積極的に対面でナンパできない人たちは、非接触型の出会い(主にアプリ)に偏りがちになるのは致しかたないだろう。
そして、自分で言うのもなんだが私はとにかくツイている。
大した努力もしていないのに、私のメインターゲット(完璧に一般的なOL)を捕まえることに成功したのだ。彼女の名はマイ。残念ながら麻衣ではなく舞のほうだったが、私が好きな女の名前ランキング1位の名前だ。
そして、彼女の写メはどことなく永作博美に似ていた。

多少の加工はされているのだろうが、笑顔の雰囲気は永作博美に見えなくもない。試しに、彼女の画面を出したスマホを5メートル先の壁に置いて見てみたら、かなり永作博美に見えた(実際は画面が小さすぎて何が映っているのか見えなかった)。
この時を境に、私は彼女のことを「5メートル先の永作」と呼ぶことにした(以下、5永作)。
5永作とアポ日時をサクっと決め、横浜で会うことにした。
待ち合わせ場所に向かうと一人の女性が立っていた。およそ10メートル先に見える彼女は細身で、ファッションもザ・OLの休日風。そして、顔はやはり永作風味がある(ような気がする、いや、そういう気にしよう)。
ああ、俺はなんてツイてるんだろう。
自分で言うのもなんだが、本当に私の人生はツイてるほうだと思う。
男とも女とも、遊び・仕事どちらにしても良い出会いが多くあった。
そして今、私は人類が作り上げたインターネットという技術を用いて無料で新たな出会いを手に入れた。
その相手が永作博美風。
こんなにツイてていいのだろうか?

バカリズムだった。
永作博美とバカリズムを交互に見ると、右ひじと左ひじほどの違いしかないのかもしれないが、この二人の違いは果てしなく埋めがたい違いがある。
ただ、私がここで落ち込むようなことはない。永作風バカリズムなど出会いたくてもそうそうに出会えるものではない。ラッキーでしかないのだ。なお、ここからはナガリズムと呼ぶことにする。
カフェバーのカウンター席に座り、飲みながら簡単な自己紹介。彼女は金融系の会社に勤めているらしい。年齢は35歳だが20代でも通用しそうな童顔、おっと間違えた、バカリ顔だ。
最初の一時間はバカリズムが邪魔をしてなかなかやる気は出なかったが、アルコールの助けもあり、ナガリズムぐらいに見えてきたあたりから私は本領を発揮した。水を得たフナのように流ちょうなトークでナガリズムを笑わせた。
正直、ナガリズムは私に食いついていた。
こんなに内容がない話で食いつかせる俺ってマジ天才、そう思っていた。
あくまで1軒目は一切口説かず手も出さないのが私の流儀だが、攻めてきたのはナガリズムだった。やたらとボディタッチをしてくる。そして店を出るころには横にぴったりつき自然と手をつないでいた。
これは恐らくヤレる。
やれたかも委員会にかければ、恐らく満場一致で「やれた」が下されるであろう。
だが、このとき私は気づいてしまった。
やっぱりバカリズムやないか。
近くで見ればみるほどバカリズム、誰が永作博美だよ、いいかげにんしろバカ野郎。
さて、顔面問題はおいといて、一旦放流することにした。
時刻にして21時半。
ラブホを挟んでも十分帰宅できる時間だが、私はバカリズムを駅まで見送った。
バカリズムはなかなか帰ろうとしない。
だが、「ね、また来週」と促し、お帰りいただいた。
え?やらないの?
うん、やらない。
ていうか、様子見にした。
アポ自体はまったく問題はなかった。
むしろ、すごい食いつきだったし、展開は完璧だった。
ではなぜやらないのか?
顔面がバカリズムだから手を出さなかった、のではない。
どうもキナ臭いような気がしたのだ。
私はアポを通してバカリズムにいくつかの違和感を感じていた。
①いきなり!フルネームだった
最初、私は「どうも、ばかなべです。」とあいさつをした。バカリズムは「下のお名前は?」と応答してきた。
初対面でいきなりフルネームを要求するスタンス、この手のタイプは自覚していないのだが「要求が強い傾向」にあると思われる。いきなりステーキを食べるぐらいならかわいらしいものだが、困ったらペッパーランチを売却する程度のシビアさを感じる。
②20代は恋愛経験が皆無だった
大学卒業後、就職してから30歳を過ぎるまで、男との付き合いはなかったという。まさか処女か?と思ったがそうではないらしいので安心はした。
だがしかし、よくよく考えるとおかしい。
なぜ20代というもっとも女の魅力が発揮される期間、彼氏がいなかった(または男とのかかわりがなかった)のか。一般的に考えると理解に苦しむ。バカリズム顔だが決してブスではない。物好きもいるはずだ。
そこで、それとなく聞いてみたが「仕事でストレスが溜まっていた」と的外れな回答がなされた。
20代で男と触れ合っていなかったということは、単純に「男と触れ合った経験値が少ない」ことを意味する。つまり経験不足、練習不足。
人と触れ合い、どうすれば人に喜ばれ、どうすれば人を傷つけ、どうすれば人が嫌がるか。そしてどれだけ傷つけられ、どうやって立ち直るのか。その経験値が少ない人ほど傷つくのを恐れる。
何度も傷ついた人は小さなことで動じない。傷ついたことがない人は些細なことで傷つくし、怒る。それは感情のコントロールができない子供とも言える。
③典型的な職場批判型OLだった
彼氏を作らなかった原因は仕事上のストレスだったと言うので「仕事、大変そうだね」と言った瞬間、待ってましたとばかりにバカリズムのソロトークコーナーがはじまった。
どうやら上司や同僚の文句が得意技のようで、まさに水を得たブラックバスのようにさまざまな情報を提供してくれた。というか、恐らく社外秘ですよね?という情報までも話すあたり、情報取り扱いセンスはなさそうである。
④同僚の女に裏切られる女だった
30代になり、将来に不安を覚えたバカリズムは婚活を始めたらしい。この時点で自分の将来を支えるための活動=自分勝手な要求宣言をしていることに自覚はなさそうだ。
そして、会社の同僚と始めた婚活では合コンを繰り返したようだ。まぁ金融系OLならそこそこの案件が回ってくるだろう。
遠めには永作博美に見えなくもないので、バカリズムに食いついた男もいた。
だが、その男と付き合ったものの、その男は途中でバカリズムの同僚の女に乗り換え、彼らは結婚したらしい。
は?
ざけんなよ!!!
バカリズムは怒った。
そりゃ怒るだろうな。だが、怒っていても仕方がない。
バカリズムは再び会社の同僚と婚活を再開した。
遠めには永作博美に見えなくもないので、食いついた男もいた。
だが、その男と付き合ったもののも、その男は途中でバカリズムの友だちの女に乗り換えた。
「私を傷つけたあの人たちは許せない」
初対面の私に一体どこまで晒すんだとつっこむ余地さえ見当たらない。
そして、私はある大問題の可能性を感じた。
バカリズムは物事がうまくいかないことを他人のせいにする考え方が強いと思われたのだ。
さて、この後ばかなべ劇場に切り替え、笑わせること1時間。バカリズムは尋常じゃないほどに食いついてきた。
だが、恐怖感を抱いた私は放流した。
その判断はどうやら正しかったようだ。
2日後、バカリズムからLINEが届いた。
初めてのLINE。
中身は彼女の情報が入っているので一部抜粋したのだが、

いきなり10行超えLINE
しかも名刺交換を要求してきた
さすがはいきなり勢、すでにこの時点でホラーである。
これ完全に身元確認したうえで結婚させられるやつやんけ(;゚Д゚)
私は、やんわり、やんわりと断った。
というかこの時点で再会するつもりなどないのでやんわりとさよオナラと告げた。

まだ続くの?(;゚Д゚)
これはヤバい、ヤバすぎる。
暗に伝えたさよオナラなど無視、とにかく名刺出せの一点張り。
そうですね、行間を読んでくれなんて私の考えが間違ってました。
アポ辞退、はっきりとお伝えした。

まだ続くのーーー?(;゚Д゚)
いやいやいや、出会い系アプリで出会って2時間飲んだだけの男に「私の気持ちもわかってください。」って、どこまで要求するんですか・・・
ていうか、4人の友だちにとられたって・・・それ単に選ばれなかっただ(自粛)
いや、もうダメだ。
これは長引いたら死ぬやつだ。
バカリズムから違う女に乗り換えた男の気持ちがわかりみすぎる。
こうなったら「逃げる」コマンド連発するしかない。
もう一回、ド直球を投げよう。
「ごめんね、僕には無理だけど。婚活がんばってくださいね」
どうだ!
これなら完璧だろうが!!!

どうなってんのーーーー?(;゚Д゚)
どうすればこんな都合の良い考え方ができるんだ・・・あんたは無敵かよ・・・
だが、バカリズムは私に逃げ道を与えてくれた。
「気が向いたら連絡ください。」
なので、気は絶対に向かないので連絡しなくてOKだということだ。
もしこれでまた連絡きたら、弁護士ドットコムに相談しよう・・・
いやー、でもよかった。
もしあの時、ラブホインしてたら・・・そのあとのことを考えるとゾッとする。駅待ち伏せとかありえるやつやぞこれ・・・
あのときの放流は正解だった。
やはり、俺はツイている。←違う
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