ホリ君とヒロシ君の話 第三話 ヒロシ、キレる

1.ブサクエⅠ

中型免許を取った数日後、念願のCBR400ccが納車された。初めて公道に出て走るのは緊張するので近所の大きな駐車場で発進、停止、右折、左折などの練習をした。そしていよいよ公道デビューの日、ヒロシは私に付き合ってくれた。

「めっちゃキレイな夜景がある場所連れてったるわ、ついてこい!」

は?私はヒロシの女ですか?と言いたいところだが、今日の私はヒロシの言いなりだ。なんせ初めての公道、めちゃめちゃ緊張した。

車の通りが少ない深夜、梅田から新御堂筋に乗り箕面に向かってバイクを走らせた。

気持ちいい・・・なんて気持ちいいんだ!!!

バイクで風を感じながら走る喜びを私はかみしめていた。

この瞬間は今もはっきり覚えている。何事も「初めての○○」というのは脳みそ内に焼きつくものだ・・・。

箕面から見る大阪の夜景はシンプルにきれいだった。

「ほらよ!」

ヒロシに貰ったあったか~いコーンポタージュ。少し寒い箕面の夜には最高すぎた。夜景が女に効果的なのも分かる気がした。今日のヒロシは最高にかっちょいい。抱かれてもいい。

この夜景を見て思った。絶対に女をここに連れてこようと。

夜景を堪能した後、帰りは171号線から産業道路を通って家に帰ることにした。新御堂と違い、信号があったり右折左折することもあるため初心者の私はノロノロ運転になる。それをやさしく先導してくれるヒロシ、まったくなんてイイやつなんだ。

と、思ったら事件が起きた。

スポンサーリンク

私とヒロシの間に割って入ってきたタクシーがヒロシに幅寄せし、それにブチ切れたヒロシがタクシーとカーチェイスを始めたのだ。

それまでゆっくり走ってくれていたが、タクシーと遥か先のほうでモメている。信号で止まると窓越しに口論し、信号が青になると再び二人とも煽り合い。私はノロノロ運転なので一切追いつけない。

そして200m先の赤信号で止まると、ヒロシはバイクを止め、タクシーからは激怒したおっさんが降りてきた。ああ、おっさん死んだな・・・ヒロシは最強にケンカが強いのに・・・早く止めなければ・・・とは思っているが、なんせノロノロ運転。二人の取っ組み合いのケンカを眺めながら近づき、私は冷静にバイクを止めた。

「おいおい、ヒロシやめと・・」

「お前ら何しとんじゃーーーー!!!」

止めに入ろうと思ったら単ポリ(単車に乗ったポリスの略だと思われる)がものすごい形相で現れ、二人を怒鳴りつけた。それでも取っ組み合いをやめない二人。

「やめんかお前らーーーー!!!」

ポリスが単車を止め、二人の間に入り二人を引き離した瞬間、事件は起きた。

 

 

 

ゴロンゴロン・・・

 

 

 

何かが私の足元に転がってきた。

それは、通常は道路に転がっているものではない。

怒り狂うタクシー運転手とヒロシと単ポリの3人が立ち尽くす道路上にあるべきものではなかった。

その存在は違和感でしかない。

学校に迷い込んだ犬、清楚系OLの自宅にあるバイブ、サラダしか食べないデブ、流ちょうな日本語をしゃべるボビー・オロゴン。

この違和感をどのように例えればいいのかはわからない。

だが、圧倒的な違和感が私の足元にある。

違和感の正体、それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヅラである

 

 

 

 

 

初めて見た、ガチのヅラ。ちなみに私ははっきり見ていた。ヒロシともみ合いになったときにタクシー運転手の髪の毛が吹っ飛んだのを。

見事に他人のヅラが飛ぶ瞬間を見たのである。

そう、私の足元にタクシー運転手のヅラが転がってきたのだ。

「お前らええかげんにせぇ!!そこの交番についてこい!!」

ポリスに怒鳴られた二人はつかみ合いをやめた。

ヒロシはバイクにまたがった。

タクシー運転手はヅラを拾い

 

 

ヅラを被った

 

 

え?今更被るの?うそでしょ・・・

と思ったが、タクシー運転手は手慣れた手付きでヅラを被った。

パチンパチン!

え?なにこの音?それは装着完了の合図ですか?

スポンサーリンク

全員、交番まで移動、車やバイクを止めて交番の前に止め、交番の中で話し合いがはじまった。

ポリスがデスクに座り、ヒロシとタクシー運転手はポリスの対面に横並びで座った。

私はヒロシとタクシー運転手の後ろにあるベンチで座り、話し合いを見届けることになった。

ポリスは二人になぜ揉めたのかを聞いた。

二人は真剣な表情でお互いの主張をした。まだ険悪ムードだ。

怪我の有無、車やバイクへの損害有無などの確認も勧められた。

だが、私には違和感があった。

この展開はおかしい。

ていうか

 

 

ヅラのは無視ですか?

 

 

まぁケンカもただ事ではないけども、どう考えてもヅラのほうがただ事じゃない( ´艸`)

私には無理だった。

何がって、もちろんヅラの件を無視することだ。

タクシー運転手がうなずいたり首をかしげるたびに、微妙に通常の頭髪と異なる動きをするヅラ。

三人は真剣に話し合っている。話し合いも進み、険悪ムードも幾分か和らいできている。

だが、私の神経はすべてヅラに集中していた。

やはり、通常の頭髪とは何かが違う。

そりゃそうだ、ヅラなんだから。

そして、心の中で悪のばかなべがささやく。

「ヅラのくせに何を神妙な表情しとんねん」

コラ、悪い、悪いぞ。

やめとけ、ヅラいじりはやめとけ。

ヅラが神妙な表情して何が悪いんだよ!

善のばかなべが必死に悪のばかなべを制止するが、高校生のばかなべにとって「ヅラ」は、小学生にとっての「ウンコ」ぐらいの破壊力を持っていた。

波平がヅラを被った瞬間を目撃したようなもので、それを忘れろと言われても無理だよ。波平、ヅラ、ウンコ・・・ダメだもうそんなことしか思いつかない・・・

助けてくれ、誰か・・・ヅラが神妙な顔してるなんて・・・もう無理・・・

もう、限界だった。

「こら!お前なにわらっとんじゃ!!」

 

 

ポリスは余計なツッコミを入れた

 

 

必死に笑いを堪えていたが、ヅラを見ていて恐らくニヤけていたのだろう。限界を超えた私の表情を見て、ポリスが注意した。

だが、このポリスはアホなのだろうか?ヅラの後ろにいるんだから私が笑っていようがいまいが、ポリスが黙ってればバレないのに。なんでわざわざ突っ込むのだ。笑う理由なんてヅラに決まってるだろ。

運転手はギロリと私をにらみつけた。そして再び険悪ムードが漂った。

だが、険悪になればなるほど「ヅラのくせに怒ってるよ(笑)」と悪いばかなべが再び私に囁きだした。ヅラのくせにってなんやねんと、自分自身にさえもツッコミを心のなかで入れていた。

私は必死に笑いを堪え、うつむきながら「失礼しました・・・」と謝罪した。

その後、約30分ほどリアル「笑ってはいけないヅラin交番」で耐え忍ぶことになった。どうせならケツバットしてくれたほうがいいよ・・・( ´艸`)

こうして、初めてのツーリングはヅラで幕を閉じた。

・・・

さて、そうこうしていたらヅラエピソードで3,000文字。またもや無益な記事を書いてしまった。本記事で書きたかったのはその後のヒロシとホリ君についてだったのに・・・

要約しよう。高校卒業後、3人はバラバラの道を歩んだ。

私は大学に進学。バイクに乗っててもモテないことに気づき、ナンパ人生にシフトした。

ホリ君は自動車関係の会社に就職。社会人1年目で400万円の新車(セダン)を購入し、バイクに続いて車も3人の中で最初に買った。だが、車のローンを払うために毎日居酒屋でバイトしていたので車に乗る時間がないというコントを演じた。

ヒロシは・・、相変わらず自由人。バイクと筋トレとスキーにハマり、高校にはあまり行かず。記憶は曖昧だが高校卒業したのは20歳を超えていたように思う。そして20歳ぐらいの頃にヒロシは結婚。相手は子持ちの年上女性。小便を飲む女ではない。

そして、結婚式に招待された私は大役を担うことになる。

「ばかなべ、お前俺の友人代表スピーチ頼むわ」

は?

つづく。

スポンサーリンク

このサイトをフォローする!

コメント

タイトルとURLをコピーしました