第3章
「I was in the museum」
三鷹台からメールで道案内をされ、真っ暗な住宅街を歩き続けること10分。
ようやくムーが生息しているであろう赤い窓の家に到着した。
暗くてよくわからないが、いわゆるボロいアパートの1階。
窓が赤いのはカーテンが赤いからだ。
てか、赤のカーテンって・・・。
かなり攻撃的だな・・・。
なんだか秘密裏に大麻でも栽培していそうな家・・・
ん?
待てよ?
よく考えたらただメールをしていただけで、その内容が本当である証拠などない。
相手は何者なのかなど、メールの文書を偽造すればどうにでもなれる。
私は今、三鷹台駅から歩いて10分の謎の街にいる。
金曜、夜22時。
そんな時間に見知らぬ男を家に入れるバカなどいるのか?
いるわけねーだろ(;゚Д゚)
これってもしかしてヤバくないか?
言われるがままにここまで来たはいいが・・・ムーという人物が何者かなんてまったくわからないし、本当に存在しているのかすら怪しい。
いや、なんなら・・・
家の中にいるのは男の可能性もある
その男が北斗の拳の断末魔みたいな人だったら即死じゃないか・・・
目の前の真っ赤なカーテンの部屋にいるのは一体何者だ・・・
急に恐怖感が私を襲った。
逃げるなら今しかない。
入るべきか、逃げるべきか。
だが
「迷ったら前へ」
一次的な損害はどうでもいい。経験することに価値がある。
これは私が大切にしている言葉だ。
何が起きても大丈夫なように、個人IDを持たず、現金も3万円しかもたない。
最悪走って逃げることを想定し、日々ジムで走り込みを行い、2キロ程度なら全力疾走できるほどに肺を鍛える。
1タッチで110番できるよう携帯体制も整え、最悪な状況を避ける。
迷ったら前へとかいいながらめちゃめちゃビビっとるがなとツッコむ人もいるだろう。
ああ、ビビってる。
だが、もはや進むしかない。
ビビってちんちんは超ミニ状況の中、ドアをノックした。
コンコン・・
ドアの向こう側から、玄関に向かう足音が聞こえた。
無論、タラちゃんのようにコミカルな音ではない。
ドタドタ感たっぷりの音は間違いなくドアの向こうにタラちゃんよりも体重の思い人物がいると思われる。
カツオレベルか、波平レベルか、いささか先生レベルか・・・
もう覚悟は決めた。
波平が出てきたらハゲとるがなとツッコむことを。
ガチャ・・・
運命の扉がドアの向こう側から開かれた。
「わりと早かったね(笑)」

めっちゃ美人やないか(゚Д゚)
王道ではないかもしれない。だが、蒼井優を連想させるスレンダー美人が玄関に立っていた。予想外すぎて1秒ほど俺は立ち尽くしていた。
※この記事を書いた当時は蒼井優を連想していたのだろう。本記事ではパク・ソダムを連想としているが、ぶっちゃけどっちでもよくて、要するにそっち系の美人ということである。
あまりに予想を超える好みの女が現れ、真顔になってしまった。
ムー「どうしたの?ていうか私たちおもしろいね(笑)」
ばか「あ、はじめまして(笑)」
ムー「はじめまして(笑)どうぞ入って入って!」
ばか「おじゃましまーす」
軽い、明らかに軽いノリ。
この軽い美人の家に私は今からお邪魔するのか・・・
なんて素敵すぎる展開であろうか・・・
入ってということなので、遠慮なく部屋に入った。
部屋中に裸体の写真が貼られていた(;゚Д゚)
な・・・なんだこの部屋は・・・
部屋中に裸体の写真が貼られている。
裸体といっても、俺たちが週末に見ている下品な部類ではなく

芸術的なヌードアートっぽいやつ。
顔は写っていないが、まぎれもなく裸体。
ここは美術館ですか?
と問い合わせ窓口にメールしてしまいそうな世界観だ。
ばか「あ・・あのこれ・・・」
ムー「ああこれ?私(笑)」
お前の乳かい(゚Д゚)
出会って5秒でおっぱい確認。
私の歴史の中で、初対面の女のおっぱい確認ファーステストラップは更新された。
このラップはウサイン・ボルドでさえ更新するのは困難だろう。
そういえば写真集を出すとかなんとかメールでやりとりしていたような記憶がある。
自分の裸体さえも作品にするとは・・・
芸術系女子ってことか。
とはいえ、芸術的な写真だ。
おっぱいとはいえエロ部類の写真ではないので、もちろん勃起した。
少なくとも、4面にそれぞれ20枚ぐらいのおっぱい写真が貼られている。
4×20×おっぱい=160の乳首が私を取り囲んでいる。
ていうか、初対面の男を裸体美術館に招くとは、芸術系女子はやっぱりちょっとイカれてる人多いような気がする・・・
【モンスター情報】
ムー レベル28 29歳 OL 多分Dカップ(写真情報)
顔好み、裸体好み。
ややサイコパス性を感じるが、そんなもの問題ない。
部屋の中央には冬はこたつで使用されていそうなテーブルがあり、明らかに2人で食べれる量を超えたカニ鍋がスタンバイされていた。
この人は食べる量というものを考えずに注文しちゃうタイプらしい。
ムー「さぁ!とりあえずカニ食べようよ!」
ばか「そうですね、乾杯しましょう。」
ムー「はい、じゃかんぱーーーーい★」
完敗である
この時点で私は完敗していた。
家までメールナビ、怪しいボロアパート、顔面パク・ソダム登場、裸体美術館、豪勢なカニ鍋。
コンテンツが多すぎる
完全に私は楽しまされていた。
いつも楽しませる側であるはずなのに、今の私は完全に楽しまされている。
ムーのエンタテイメント的実力はあの世界のディズニーランドを超えていると思う。
くまのプーさんも裸体のムーさんにはかなわない。
この時点で私はムーに興味津々になっていた。
出会いの勝負でいえば即死である。
ならば、存分に楽しむしかない。
カニが旨い(゚∀。)
ビールも旨い(゚∀。)
会話も弾む(゚∀。)
部屋中おっぱい(゚∀。)
至福ーーーー(゚∀。)
ミッキーマウスよ、もうお前が世界一のエンターテイナーではない。
ムー様こそが世界一だ!!!
・・・
腹ごしらえも終えたので、落ち着いてムーの調査に入った。
ムーは本格的に写真をやってて、写真集の出版にもかかわっている。
実際にムーが撮影した写真が掲載された写真集や本も見させてもらった。
どうやらガチのアーチスト系女子のようだ。
男に困っているわけではなく、クラブ活動も月2回は出勤しているらしい。
仕事は某大手企業で働くキャリアウーマン、部下も何人か持っている。
なんだこのスーパーマンみたいな女は・・・
そして妙にムーとはウマが合った。
会話が途切れず爆笑に次ぐ爆笑。
こんなことは滅多にない。
やがて仕事の熱い話で盛り上がった。
要するにムーは仕事で成果を出すのが好きで、誰かを楽しませるのが好きな人のようだ。
共感に次ぐ共感。まるで親友のようだ。
時間は1時を過ぎ、終電はとっくになくなったが、ムーと夜通し話続けた。
単純に素敵な人だ。
こうなると、セックスしたいとかそういうことはどうでも良い問題だった。
せっかく出会えたこの関係を崩す必要はない。
友達同士で十分だ。
この出会いを大切にしよう・・・
そう思ったとき、時計を見ると3時を過ぎていた。
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